レンズの個性。

レンズの焦点距離によって、表現が大きく変わります。これは一眼レフでもコンパクトカメラでも同じ事。
例えば望遠レンズやズームレンズの望遠側。「大きく撮れる」というだけではなく、ピントが浅い、遠近感が圧縮される、などの描写特性があります。(ブレに弱いというデメリットも)


広角と標準と望遠。

片目で見える範囲に近いとされる45度前後の画角を撮る50mmレンズを標準として
それより広い範囲が撮れるレンズを「広角レンズ」、より狭い範囲を撮るのを「望遠レンズ」といいます。
広い焦点距離を自由に動かせるのがズームレンズ。コンパクトカメラの殆どがズームレンズ搭載なので、本当に一般的な存在となりました。

具体的な特性の変化は「ゆがみ」「遠近感」「ピントの深さ」。
広角側に行くに従って「ピントが深く、遠近感が強調され、ゆがみが生じる」
逆に望遠側に行くに従って「ピントが浅く、遠近感が減り、ゆがみが少なくなる」



違い

作例右側がズームレンズの広角側17mmで撮影、右は同じようなレイアウトになるように調整して望遠側70mmで撮影したモノです。

まず注目して頂きたいのが、オジサンとモミの木の位置関係。
広角側では随分後ろにあるモミの木が、望遠側だとすぐ後ろに迫ってきています。
これが「望遠の圧縮効果」(後述)。
逆に広角側では、本来の位置関係より遠近感が誇張されているので、実際のセットよりも広い印象を与える写真になっています。

次にオジサンにご注目。広角側のオジサンが「ブニョっ」とゆがんでいるのがお分かり頂けると思います。ちょっと魚眼レンズのゆがみに近いですね。
一方、望遠側では、ゆがみもなくスマートな実際のイメージに近い写真になっています。
このため、正確さが求められる商品撮影や、バストアップくらいのポートレートには望遠レンズが使用されます。

ピントに関しては、広角側が若干深いですが殆ど同じ結果。レンズと被写体の距離が近ければ近いほどピントが浅くなるため、近づいて撮影した17mmと、離れて撮影した70mmでは同じようなピント具合となります。



広角撮影。

上で述べた通り、広角側の特徴は「広い画角」と「深いピント」。
また「遠近感が誇張」されるので、狭いスペースでも広く見せる事が出来るというメリットもあります。
広角側はアングルをつけると極端な歪みとパースが発生するので、それを逆手にとって
下から煽って撮影する事で画面に勢いを出す、というのも撮影手法の一つ。
ゆがみが場合によってはデメリットになるのと、(水平に構えれば歪みは最小限に抑えられます)画角が広過ぎて、必要の無いモノまで写ってしまう場合もあります。

またコンパクトカメラの「接写1cm!」みたいのは、殆どが「広角側で」の話。寄れるのはいいけど、思いっきり歪みが発生するし、そんなに近寄るとカメラの影が被写体に被ってしまいます。
本当の意味で「接写に強いコンパクトカメラ」というのは標準〜望遠域での接写能力が高いカメラです。

広角側のもう一つの利点として、ブレにくい点も挙げられます。手持ちでもある程度簡単に撮影出来るというのも広角側のメリット。接写の場合にはその限りではなかったりもしますが、少なくとも同条件なら望遠側よりも広角側のほうがブレに強いのは間違いありません。



撮影:Canon EF17-40mmF4

望遠。

単純な話、望遠域の特性は広角の逆で「狭い画角」「浅いピント」「遠近感の無さ」。前述の通り、写真の歪みも少なく背景も圧縮されピントも浅くなるので、ポートレート的な撮影には必須です。直線的なモノを撮影する場合にも、望遠域の歪みの少なさが活かせます。

ただし画角が狭いので、望遠域で広いエリアを撮影するとなると、それなりのスペース(距離)が必要になるのと、ブレが非常に目立ち易くなるデメリットもあります。

左の写真がサンプル用に撮影したポートレート風のカット。
ベッドの上で撮影したのでプレモの木以外に枕とか毛布が写っているんですが、望遠の圧縮効果(※)とピントの浅さによって、何があるのかよく判らなくなっています。
主役を際立たせるのにも、都合がいいのが望遠側の特性です。

(※)圧縮効果
望遠レンズの大きな特徴で、被写体の背景を引き寄せて写してしまう効果。迷惑なのが、マラソン中継。望遠レンズで撮影した映像では、前後の距離が圧縮されて映るので距離が詰まったように見えても、カメラが切り替わったら、実は全然距離は縮んでいなかったり。
ホラー映画で主人公が何かに驚いたような場面で、背景の壁がグ〜っと迫ってくる演出がありますが、あれもズームレンズの圧縮効果。


やや結論。


レンズやズーム域の選択は写真表現の中枢の一角を占めます。その違いによる描写の変化を把握するのも写真の基本中の基本。カメラやレンズに撮らされるのではなく、自分のイメージ通りの写真を撮るためには、どのレンズ、どのズーム域を使って、どの角度から、どこからどこまでを写すべきかを考えて撮影すれば、おのずと写真は変わってくるハズです。

コンパクトカメラをお使いの方も、まずは広角一本槍を卒業してズーム側(T)での撮影に挑戦してみて下さい。
勿論、広角側よりも写せる範囲が狭くなるので、少し離れて撮影。手ブレが気になる場合には三脚を使うか、ISOを上げて対応してください。(ノイズが増えるので避けたいところですが)


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